みなさま、おはようございます。6代目です。
加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。
前回ブログの続きで、阿弥陀如来立像修理のお話しです。
「長年に渡り積み重ねられた面影を残してほしい!」
お客様からのご希望でした。
このご要望を受け、
製作当時の容姿や時の流れで纏われた風合い(ルックス)を最大限残しつつ、傷ついた場所だけを直す。
という「部分修理」で決まりましたよね♬
尚且つ、
「時の移ろいで生じた雰囲気を、意図的に再現する」
部分的に修理した箇所を「古色仕上げ」で行うことになりましたよね♬
部分修理の場所は、以下となります。
① 光背の欠損と紛失
② 右手の紛失
③ 螺髪の欠損
④ 華盤の欠損
⑤ 蓮台と敷茄子のグラツキを固定
それでは、修理の模様をお話ししていきますね。
まずは、②③④からご紹介します。
<仏身全体>
<右手 その1>
<右手 その2>
全身写真から一目で分かるように、「②右手」が無くなっています。
痛々しそうですね。
<螺髪 その1>
<螺髪 その2>
次に、髪の毛が3ヵ所欠けています。
「髪の毛が抜けています」という方が、しっくりきますね。
パッと見はブツブツのイボに見えますが、髪の毛ですからね!
この髪の毛を「螺髪」と呼びます。③です。
「螺髪」・・・「らほつ」と読みます。
<台座全体 その1>
台座に移ります。
「④華盤」の欠損場所に気づかれましたでしょうか?
<台座全体 その2>
この角度からなら、いかがでしょうか?
<蓮台・敷茄子・華盤>
ここまで寄ると、気づかれるのではないでしょうか?
「華盤」は、お花が開いた状態に見える部分です。
一番上が「蓮台」、蓮台と華盤に挟まれた部分が「敷茄子」と呼ばれます。
「華盤」・・・「けばん」と読みます。
「蓮台」・・・「れんだい」と読みます。
「敷茄子」・・・「しきなす」と読みます。
<華盤 その1>
<華盤 その2>
ここまで近づけば一目瞭然ですよね♬
これら②右手③螺髪④華盤の各所に、木地を新調します。
<右手木地直し その1>
新しく製作された右手です。
取付を行うにあたり右手にホゾ、手首にホゾ穴を作りました。
接着だけでは弱いので、強度を上げる意味を含めてホゾ式を採用しています。
<右手木地直し その2>
<右手木地直し その3>
上手く繋がりましたね♬
<螺髪木地直し その1>
螺髪にも木地を足しました。
木地を足した以外に変化が出たのに気付かれましたでしょうか?
部分修理に先行して、全体の「埃落とし」を最初に行います。
埃が付いたまま修理は行われません。
まずは、お身体を清掃してからになります。
埃は、時の流れで纏われた風合いとは異なります。
分かりやすく言いますと、ゴミですよね。
奈良県東大寺の大仏様も、年末に「お身拭い」と言われる大掃除が行われますよね。
<螺髪木地直し その2>
埃を落としたことで、
肉髻珠(赤)と白毫(透明)が露わになりました。
決して取り替えたわけではありませんからね!
もうひとつ印象的なことがあったのですが、最終話でお話ししますね♬
<華盤木地直し その1>
<華盤木地直し その2>
華盤の欠損箇所にも同様に木地を継ぎ足ししています。
全身写真で木地直しを確認してみましょう。
<仏身全体木地直し後 その1>
<仏身全体木地直し後 その2>
<仏身全体木地直し後 その3>
良い感じ~~~で、木地直しが終了です
直すべき部分のみ直す手法。
これを「部分修理」とか「現状維持修理」と言います。
これまで文字だけでお伝えしていましたが、
「部分修理ってこういうことなんだ!?」
っていうことを写真から実感いただけると思います。
次に、漆塗りの工程に移ります。
<右手漆塗り その1>
砥粉と膠を混ぜた物を下地とし、その上から刷毛を使い、漆を塗りました。
<右手漆塗り その2>
阿弥陀如来様のお顔が、修理工程中に汚れないように面隠ししてあります。
螺髪は金箔押しではなく彩色になります。
胡粉と膠を混ぜ合わせた物を下地として塗り、先に終えております。
仏様を慮った順番で修理していただいております!
<華盤漆塗り その1>
華盤も同様に進めてあります。
最後に金箔押しと古色をして出来上がりです。
<右手金箔押し その1>
衣の袖口に金箔が押されていますが、きっちり古色で色合わせいたします。
<右手金箔押し その2>
ミスではありませんからね!
<蓮台 その1>
部分修理の項目に挙げていないですが、蓮台正面の真ん中が割れていました。
蓮華の葉を1枚づづ貼り付けてある「吹き蓮華」と呼ばれるものです。
先月、お位牌ブログの時にチラッとお話ししましたよね
葉を剥がして木地修理から行うと予算が嵩んでしまいます。
また、「製作当時の面影を残す」ことが大前提ですので、
<蓮台金箔押し その1>
割れ目に漆を挿し、金箔を押しました。
当初、お見積に入っていなかったのですが、職人さんのご厚意で無料でしていただきました。
<後頭部螺髪 その1>
もう1ヶ所ありました
<後頭部螺髪 その2>
彩色が取れていました。
1ヶ所白くなっている部分です。
<後頭部螺髪古色後 その1>
<後頭部螺髪古色後 その2>
古色後の後頭部螺髪です。
こちらも同じく無料で受けていただきました。
本当にありがとうございました。
「埃取り」を怠らなかった成果と言えましょう。
お客様の家では、気付けなかったんです。
職人さんごめんね。
最後に、古色後をご覧ください。
<螺髪古色後その1>
<螺髪古色後その2>
<右手古色後 その1>
<右手古色後 その2>
<華盤古色後その1>
<華盤古色後その2>
「②右手③螺髪④華盤」の部分修理と古色仕上げは以上となります。
長くなってきましたので、
「①光背⑤蓮台と敷茄子のグラツキを固定」は次回にします。
初の3部作ブログになります
引き続き、ご期待くださいませ。
<以下、関連ブログ>
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さて、今回は読みやすく且つ分かりやすさを狙い、纏めて一気に3つアップします
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