「阿弥陀如来立像」の修理をご下命いただきました! その1ー3

みなさま、おはようございます。6代目です。

加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。

 

 

 

前回前々回ブログの続きとなります。

テーマは、阿弥陀如来立像修理です。

「長年に渡り積み重ねられた面影を残してほしい!」

お客様からのご希望でした。

 

 

 

このご要望を受け、

製作当時の容姿や時の流れで纏われた風合い(ルックス)を最大限残しつつ、傷ついた場所だけを直す。

という「部分修理」で決まりました。

 

 

 

尚且つ、

「時の移ろいで生じた雰囲気を、意図的に再現する」

部分的に修理した箇所を「古色仕上げ」で行うことになりました。

 

 

 

今回で最終話になりますが、

①光背⑤蓮台と敷茄子のグラツキを固定

のお話しです。

 

 

 

まずは、①光背からお話いたします。

預かり時光背_その1.JPG

<光背 その1>

預かり時光背_その2.JPG

<光背 その2>

光背のパーツとして残っていましたのが3つです。

先端部に至っては大部分が欠損しており、左右両側の途中パーツが見当たりません。

 

 

 

当初の通り既存の物を活かした部分修理で行う訳ですが、

光背の場合は難点が出てしまいます。

 

 

 

どういうことかと申しますと、

新しく補充するパーツと既存を繋げる境目、

つまり継ぎ目が目立ってしまうということです。

預かり時光背_その3.JPG

<光背 その3>

預かり時光背_その4.JPG

<光背 その4>

預かり時光背_その5.JPG

<光背 その5>

向かって右側の折れている部分の断面ですが、ご覧の通り面積が小さいんです。

糊付けすることも可能ですが、強度が心配です。

右手を直した時のようにホゾ式にすることも考えられますが、

途方もない労力と時間が掛かってしまいます。

 

 

 

・継ぎ目が目立つ

・強度が心配

 

 

 

そこで、光背のみ復元修理を提案いたしました。

復元修理とは、

既存の金箔と漆・下地を洗浄で剥がし木地まで戻し解体、

木地修理を済ませてから漆塗り・金箔押しを経て完成とする工法です。

 

 

 

「せっかく修理するのだから、あなたの提案を受け入れる。」

嬉しいお返事をいただけました。

 

 

 

それでは、光背の復元修理をご紹介いたします。

光背下地除去後_その1.JPG

<光背洗浄後 その1>

光背下地除去後_その2.JPG

<光背洗浄後 その2>

水に浸し既存の金箔・漆・下地を捲り、木地まで戻した写真です。

3つだけパーツが残っていると申しましたが、細かなパーツが新たに出ました。

それだけ耐久度が減っていたことが推測できます。

 

 

 

また、部分修理を採用し、そのまま繋げていたら。。。

せっかく繋いだ場所が、強度の弱かった部分から折れる可能性を含んでいたとも考えられます。

光背木地修理_その1.JPG

<光背木地修理 その1>

左右の欠落している部分に新しい木地が入りました。

「入りました!」と簡単に申しておりますが、

模様の流れや厚みを考慮しながらの手仕事に感嘆いたします。

光背木地修理_その2.JPG

<光背木地修理 その2>

先端部は下書きをしております。

透かしを入れる部分には、キリで目印を入れています。

無意味に穴が空いている訳ではありません。

光背木地修理_その3.JPG

<光背木地修理後 その1>

光背木地修理_その4.JPG

<光背木地修理後 その2>

もうホンマに脱帽です!

根気よく注意深く、見事に製作していただきました。

光背木地修理_その7.JPG

<光背木地修理後 その3>

光背木地修理_その5.JPG

<光背木地修理後 その4>

光背木地修理_その6.JPG

<光背木地修理後 その5>

継ぎ目も凹凸がなく、滑らかにビシッと揃っております!

「当たり前じゃ~~!!」

と、職人さんからお叱りを受けてしまいそうですが。。。

でも、本当に凄いです!

光背木地修理_その8.JPG

<木地修理後>

木地直しを終えた全体写真です。

まだ完成では無いお姿ですが、不足箇所が戻り、あるべきお姿に一歩近づきました。

預かり時全体写真.JPG

<木地修理前>

お預かり時と比較すれば、より感じていただけると思います。

次に、漆塗りの工程に進みます。

光背下地_その1.JPG

<光背下地塗り その1>

漆を塗る前に、下地をほどこします。

砥粉と膠を混ぜたものを塗っています。

光背下地_その2.JPG

<光背下地塗り その2>

裏側の写真をよ~~く目を凝らしてご覧いただきますと、編み目が見えると思います。

模様の内側の平場部分です。

 

 

 

これは、「寒冷紗」を貼り付けています。

木地の強度を更に上げるため、貼りました。

「布着せ」とか「布貼り」と呼びますが、木地まで戻したことの恩恵と自負します。

折れてる箇所のみを繋ぐ部分修理だけでは、ここまですることは出来ませんでしたから。

 

 

 

直してから暫くの後、木地が割れる可能性を潰せたことにもなります。

「予防が出来た」と言う方が、分かりやすいかもしれませんね。

光背下地除去後_その1.JPG

洗浄の時点で、木地がポロポロと落ちていましたよね?

遅かれ早かれ、起こりうることだったと推察できます。

 

 

 

仏身や台座に比べ、光背は厚みが薄いです。

薄い分だけ耐久度は下がります。

 

 

 

ですので、しつこいようですが光背のみ復元修理を選択したことは、

この度の修理では超ファインプレーだったのかな?と感じざるを得ません。

自分が提案したと書きましたが、職人さんからの提案です(汗)

手柄の横取りは恥ずかしいですね(笑)

光背漆塗り_その1.JPG

<光背漆塗り その1>

光背漆塗り_その2.JPG

<光背漆塗り その2>

そして、漆塗りを済ませました。

下地の段階で分かりきったことになりますが、

木地修理の段階でありました「継ぎ目」が完全に消えました。

光背金箔押し_その1.JPG

<光背金箔押し その1>

金箔を押し、スカッと仕上がりました!

継ぎ目が無いですから、

人によっては「新しく作りましたか?」と見紛うほど素晴らしい仕上がりです。

光背金箔押し_その2.JPG

<光背金箔押し その2>

透かし柄になっている為に光背の裏側にも金箔押しをしております。

透かしの小口(断面)にも金箔を貼る便宜上であったり、

透かしの隙間から裏側が覗き込めてしまい、黒く見えてしまうことを回避するためです。

塗り終えた綺麗な真っ黒では、違和感を感じてしまいますから。

光背古色後_その1.JPG

<光背古色後 その1>

光背古色後_その2.JPG

<光背古色後 その2>

古色後の写真です。

既存仏身と台座の風合い(ルックス)とリンクさせて、古色の仕上がり具合を決めています。

ただ黒く汚すわけではなく、トータルを見越して古色していただいています♬

 

 

 

最後に、蓮台と敷茄子のグラツキを固定です。

預かり時台座裏.JPG

預かり時の台座裏の写真です。

陰になっていて見にくいですが、柱が通っています。

木地直し後.JPG

こちらの写真でしたらば分かりやすいかと思います。

台座の裏側の埃も、きちんと除去しております!

台座柱抜いた_その2.JPG

台座の柱抜く_その1.JPG

柱を抜いた形跡が、上の写真から見て取れると思います。

蓮台と敷茄子がカタカタと動いていたのですが、柱をしっかりと固定し直し建付けを調整しております。

 

 

 

これにて、すべての修理工程が終わりました。

それでは、完成模様をご覧ください。

仏像修理完成_その1.JPG

<修理後 その1>

仏像修理完成_その2.JPG

<修理後 その2>

仏像修理完成_その3.JPG

<修理後 その3>

仏像修理完成_その4.JPG

<修理後 その4>

一目見て「格好良いなぁ」と、自画自賛です(笑)

仏身と光背に近づいてみましょう。

仏像修理完成_その5.JPG

<修理後 その5>

仏像修理完成_その6.JPG

<修理後 その6>

仏像修理完成_その7.JPG

<修理後 その7>

何度見返しても、「超格好良いなぁ」と思います♬

 

 

 

前回ブログの「螺髪」の修理箇所の部分で、

もうひとつ印象的なことがあったのですが、最終話でお話ししますね♬

と、お話ししたことを覚えておられますでしょうか?

 

 

 

「埃を落としたことで、肉髻珠(赤)と白毫(透明)が露わになりました。」

この部分です!

仏像修理完成_その8.JPG

<修理後 その8>

上の写真をご覧ください。

実は、阿弥陀如来様の眼(黒目)も露わになりました!

仏像に目が入ることを「眼入り」と呼びます。

 

 

 

仏様の大きさや仕様から、

「もしかしたら眼が入っているかもねぇ??」

職人さんと話していたのですが、やっぱり入っていました。

 

 

 

上瞼を触って破損したら困りますので、あくまで推測だけでしたが。。。

埃をしっかり落としたことで、塞がれていた仏様の視界が広がりました!!

 

 

 

こちらも製作当時のままで、この度の修理で何も触っておりません。

埃を落としただけです!!!

仏像修理完成_その9.JPG

<修理後 その9>

仏像修理完成_その10.JPG

<修理後 その10>

仏像修理完成_その11.JPG

<修理後 その11>

完成の状態で右手・華盤・蓮台の割れ目も合わせてご覧ください。

仏像全体と調和した古色の仕上がりになっています。

仏像修理完成_その12.JPG

<修理後 その12>

仏身の後ろに隠れる部分は金箔の存在感を残しつつ、

廻りは黒く煤けた感じを出すために黒味が強くなっています。

 

 

 

「もしも現代まで残っていたならば?」をシュミレーションしながら、

職人さんの経験と感性で仕上げていただきました。

オンリーワンの風合いを表現いただけました。

 

 

 

「製作当時の容姿や時の流れで纏われた風合い(ルックス)を最大限残す」

お客様からのご依頼テーマを実現する手法として、

修理箇所に相応しい「部分修理」「復元修理」の2通りを採用いたしました。

 

 

 

「時の移ろいで生じた雰囲気を、意図的に再現する」

そして、もう1つのテーマを実現するために、「古色仕上げ」を採用いたしました。

 

 

 

光背については、こちらの提案を受け入れていただきましたが、

修理した今年から10年20年30年と継続できることを思ってのご提案です。

 

 

 

お客様へのお渡し当日、

「すごい~~~」

「思ってる通りの仕上がり~~~」

等々、威風堂々なお姿で戻って来られた故のご感想かなと推察します。

自分で言うのもなんですが、大絶賛いただきましたup

 

 

 

第1話で少し触れましたが、水害を乗り越えられた阿弥陀如来様でした。

そして、何世代にも渡りご家族を見守ってきてくださったご本尊様です。

お客様にしてみれば、替えの効かない本当に大切な仏様となります。

ですので、お客様が発されたお言葉は、とても嬉しかったです。

 

 

 

きっちりと修理されてお家にお戻りいただきますので、

「お客様同様に仏様も喜んでくださっているのでは??」

と、私は勝手に思いを馳せておりますsweat01

 

 

 

お客様のお子様が海外でお暮しされているのですが、

「息子も喜ぶわ♬」

「写真撮って、送るわ♬」

息子様にも喜んでいただき、ご家族皆様に納得いただければ幸いです。

さらには、ご先祖様も同じように思っていただければ。。。

もっと嬉しいですねnote

 

 

 

【修理品】

(名称) 阿弥陀如来立像 眼入 水煙舟光背 八角台座

(大きさ)総高さ61.5cm 仏像身丈30cm

 

 

 

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<以下、関連ブログ>

お内仏ご本尊様「三宝尊」の修理をご下命いただきました!

お内仏ご本尊様「日蓮聖人」の修理をご下命いただきました!

「阿弥陀如来立像」の修理をご下命いただきました! その1ー1

「阿弥陀如来立像」の修理をご下命いただきました! その1ー2

 

 

 

本来ならば10月初旬にお引渡し予定でした。

しかし、周知の如く骨折で1ヶ月遅れとなってしまいました。

さらには、弊社まで取りに来ていただきました。

色々とご迷惑をお掛けして、本当にすみませんでした。

 

 

 

この度のご縁、誠にありがとうございました。

 

 

 

さて、最強寒波の名の通り、毎日寒いですね。

西日本でも雪が降ったそうで、本格的な真冬になってきたのかなぁと感じます。

今朝、家を出た時に車の室外温度計が「0℃」になっていました。

京都らしい底冷えで、ホント寒いですbearing

 

 

 

今日はこれからリハビリに行くのですが、気温が低いと手術した箇所が痛いですcrying

痛み止めを飲もうかな?とも思うのですが、

薬に慣れてしまうと治りも遅そうだしなぁ?とも思うし。。。coldsweats02

 

 

 

思っていたよりも、本当に治りが遅いですねdown

困ったもんです。

 

 

 

椅子に座っている時間が長いため、考える時間がたっぷりあるんですよね(笑)

良くないことばっかり考えてしまい、悪循環甚だしいです。

 

 

 

時間が解決してくれることを拠り所にして、我慢の毎日を過ごしていきたいと思います。

もっと若ければ、もっと早く治ったんだろうなぁ

って、妄想ばっかりです(笑)

 

 

 

気温が下がると路面が凍結したりしますので、気を付けてお出かけくださいね。

私はこれ以上悪化するわけにはいきませんので、慎重に歩きます!

では、行ってきます。

合掌

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