みなさま、おはようございます。6代目です。
加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。
この度、お寺様の「過去帳」の修理をご依頼いただきました。
まず、「過去帳」とはどういう物かについて、お話しします。
ご自宅にお仏壇をお持ちの方、
あるいは、実家や親戚宅のお仏壇で見られた方もおられるのではないでしょうか?
形としての特徴は、ジャバラ式の帳面になっております。
「折れ本」という言い方もします。
昨今、御朱印集めに出掛けられる方が多いですが、
御朱印帳もジャバラ式になっていますよね♬
「あ~~、それなら見たことあります~~」
という人もおられるのではないでしょうか?
過去帳の用途は、
・亡くなられた方の戒名
・亡くなられた年月日
・亡くなられた年齢
・生前のお名前
を、書き記しておくものです。
※浄土真宗は、「戒名」ではなく「法名」と呼びます。
※年齢は、数え年で記入します。
各ご家庭でお亡くなりになられた方が記載されており、
言わば「家族の名簿」と言えるかもしれないですね。
私は6代目ですが、
我が家の過去帳には、4代目までの先祖が記載されています。
過去帳を見て、「今年は『〇代目』の年忌法要だ!」
と、確認することもできます。
※年忌法要とは、定められた年に故人様のご供養を行う法要です。
1周忌法要、3回忌法要、7回忌法要などがそうです。
年忌法要については、下記ブログでもお話ししております。
大きいお仏壇から小さいお仏壇へ その19 ~年忌法要を機に~
そして、過去帳のお寺バージョンはと言いますと、形状は同じジャバラ式の物です。
記載内容が、亡くなられた檀信徒様の戒名等(法名)が記載されています。
各ご家庭の過去帳の集合体と言えますね。
ご依頼の過去帳は大正時代(1910年代)から使われているものですが、
経年劣化で紙に欠損、断裂、剥離が生じていました。
過去帳を新しく準備し、書き直すことも可能です。
しかし、記載されている文字の書体をとても気に入っておられましたので、
修理をさせていただく運びとなりました。
それでは、修理させていただきました箇所をご紹介いたします。
まず「10日」の見開きの損傷が著しいものでありました。
下部分の紙が、欠損しています。
欠損部分の拡大写真です。
欠損サイズに合わせた和紙を作ります。
既存の過去帳は、和紙を2枚貼り合わせたものですので、
補充する和紙を挟み込めるように、木へらを使い慎重に剥がします。
上の写真が、挟み込んで糊付けする前の状態です。
うま~~く、糊付けしていただきました!
和紙1枚だけでは強度に不安が残りますので、
裏側にも同様の和紙を貼っていただきました。
最下部の和紙を見ていただくと、2枚重ねになっていることが確認できます。
裏側の状態です。
完成が、上の写真になります。
元通りに繋がりましたね^^
紙の断裂部分の修理を見ていきましょう。
中央に「南無妙法蓮華経」が記載されている見開きが、折り目の谷側になります。
説明することでもないかもしれませんが、
過去帳は折り目の山側を見開きにして使われません。
谷側を見開きとして使いますので、山側に比べて損傷がひどくなります。
先ほどの「10日」の見開きも断裂しておりましたが、
別の見開きでご覧いただきます。
断裂箇所は、裏側から和紙をあてがい補強します。
1枚だけでは補強が心もとないですので、
2枚重ねで繋ぎます。
はい!こちらもしっかり繋がりましたね^^
「南無妙法蓮華経」が記載されているのが谷側と申しましたが、
すべての谷側に和紙を2枚あてがい補強してあります。
山側ですが、谷側に比べますと損傷は目立ちません。
しかし、100年以上使われていましたので、経年劣化は考えられます。
ですので、山側には裏側から和紙を1枚あてがい補強しております。
しつこいようですが、谷側の損傷が激しく、断裂が多々見られました。
応急処置として、セロテープを貼られていました。
断裂箇所は裏側から貼り合わせて繋ぎましたが、見開き部分にセロテープが残っております。
「見た目がよろしくない!!」
ということで、セロテープを剥がし、
廻りの紙と色合わせをしていただきました!
ご予算の都合上、セロテープは触らずにそのまま残す予定でしたが、
「喜んで頂ける修理をしたい!」
職人さんの溢れる情熱で、特別に修理していただきました!!
この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
養生の和紙が残っていますが、すべての修復を終えた状態です。
こちらに表紙を貼り付けて完成となりますが、
表紙は、糸のほつれが目立ちます。
特に四隅は、糸の摩耗が激しいです。
糊止めを行い、カッチリと固めていただきました。
谷側の補強された和紙が、綺麗に出てますね♬
前述の通り、谷側の裏側には、和紙2枚を貼りました。
山側の裏側には、和紙1枚を貼りました。
補強した和紙の厚みで全体的に膨らむことが懸念されていましたが、
違和感なく元通りになったと思います
上の写真が、お預かり時の物です。
糸のほつれは言うまでもなく、
過去帳の厚みも変化がないことがお分かりいただけるかなと思います。
以上の工程を踏まえ、完成となります。
お寺様に納品させていただき、
「おおきに~~♬」と仰っていただき、お喜びいただけました!
御見積りの段階で、新しく過去帳をお作りする方がお安くなることもご提案しておりました。
しかし、過去に書かれていました書体が綺麗で、
どうしても引続きお使いしたいというご意向でした。
職人さんにも随分とご無理なお願いをいたしましたが、
お客様のご意向を叶えることが出来ました。
修理をするにあたり、お客様にはご要望が必ずございます。
ご要望は千差万別でございますが、極力それに近付けるように試みます。
まずは、ご希望をお聞かせくださいませ。
ご質問やご不明な点などございましたらば、
些細なことでもかまいませんので何なりとお問い合わせください。
しっかりとサポートさせていただきます!
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<以下、関連ブログです>
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-1
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-2
この度のご依頼、誠にありがとうございました。
今日は、生憎の雨ですね
冷え込みが予想されますので、温かい格好でお出掛けくださいね^^
雨に負けず、本日も素晴らしい1日となりますように
合掌
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