みなさま、おはようございます。6代目です。
加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。
過去帳の修理が、この度のお話しです。
弊社ブログをご覧いただき、昨年10月にお電話でお問い合わせいただきました。
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-1
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-2
過去帳とは、
・亡くなられた方の戒名
・亡くなられた年月日
・亡くなられた年齢
・生前のお名前
を、書き記しておくものです。
※浄土真宗は、「戒名」ではなく「法名」と呼びます。
※年齢は、数え年で記入します。
修理を行うにあたり、現品か現品の写真を見せていただくことになります。
現在の状態を把握しておきませんと、
「お客様のご希望を叶えられる・叶えられない」
の判断が出来ないからです。
そして、その判断をしてくれるのは職人さんです。
「おおよそで良いので教えて!」
と、尋ねてこられる方も居られます。
しかし、この場合は無責任なことを申し上げられませんので、お断りしております。
過去の事例を使い例え話としてはお話しできますが、
それぞれの過去帳により状態が異なりますので、どうしても現品か現品写真を見せていただくことになります。
この度のお客様は、
「過去帳を持って行きます!」
大阪から弊社まで、わざわざお持ちいただきました。
ご遠方のところお越しいただき、ありがとうございました。
現品をお預かりし、職人さんに見ていただきます。
修理は可能ということで、私も安心いたしました!
過去帳の現品をお持ちいただきましたが、現品の写真で進めることもできます。
ただし、こちらの場合では、
写真判断 ⇒ 現品判断
という手順でお調べさせていただきます。
① 写真で修理可能かどうか1回目の調査
② より詳しく調べるために現品を使った2回目の調査
「過去帳を持って行くのは大変だしな~~」
「過去帳を持ちだしたくないしなぁ」
というお考えの方も居られると思います。
初めから現品を持って行くことに難色を示される方は、
まずは写真でお問い合わせくださいませ。
その際に、過去帳の寸法(丈・巾・厚み)もお知らせください。
写真判断で修理不可の場合でしたらば、持って行く労力を省けますもんね。
京都から離れたお客様の場合でしたらば、交通費が無駄にもなりませんので。
修理可となった場合は、「現品を送っていただく」ことでも対応可能です。
もちろん、現品を持込していただいても大丈夫です。
「現品を預ける」ということに違いはないのですが、
修理をしっかり行うために避けては通れない道なんです。。。
修理金額も気になることだと思いますが、
現品を見せていただく方が正確な修理金額をご提示できます。
煩わしいかもしれませんが、
家の歴史を書き記した大切な過去帳ですので、どうしても慎重にならざるを得ないです。
ちなみに、修理金額は新しい過去帳を数十冊は買えます。
お客様の手前、金額を明記することはできません。
何度かお問い合わせをいただいておりますが、ほとんどの方が新品購入を選ばれています。
本ブログは長くなりますが、最後までお付き合いお願いいたします。
それでは、修理のお話しをさせていただきます。
<紙断裂 修理前 その1>
上の写真は過去帳の一部を撮影したものです。
折り目にそって断裂があり、ほとんどの箇所で同じように起こっていました。
<紙断裂 修理前 その2>
拡大してみますと分かりますが、かろうじて繋がっている所もあります。
しかし、遅かれ早かれ断裂は発生しそうです。
過去帳の作りは、蛇腹になっております。
鉛筆が指す部分は、蛇腹の谷側です。
谷側は見開き部分になります。
開け閉めの頻度が高くなりますので、山側に比べ負荷がかかりやすいです。
断裂箇所を繋ぎ直すとともに、将来を見据え、折り目に補強が必要となります。
繋ぎ直しは「裏打ち」という作業が行われます。
此度の修理の場合で言う「裏打ち」とは、既存の紙の裏側に新しい紙を貼ることです。
裏打ちをすることで、断裂箇所を繋げていきます。
裏打ち用の紙は、和紙を使用しております。
折り目にも補強すると書きましたが、
折り目に沿って「部分裏打ち」をするということになります。
写真は「部分裏打ち」の紙が短いですが、折り目の天地をすべて覆うように裏打ちします。
つまり、折り目に「部分裏打ち」、その後に全体を裏打ちしまして、繋ぎと補強を行います。
「2重裏打ち」と呼んでいますが、折り目の負担を考慮した修理法となっています。
<紙欠損 修理前 その1>
<紙欠損 修理前 その2>
断裂の他に、紙が欠損している箇所もありました。
こちらも相当量の箇所に欠損がありました
欠損部の形状に合わせて新しい紙を補充することも出来ますが、膨大な時間がかかります。
想像するだけでも気が遠くなりそうです
当然のことながら、コスト負担も相当にかかります。
「新規補充せずに裏打ちで綺麗に仕上がる」
ということを職人さんから教えてもらっていましたので、私も安心してご提案できました
こちらも同様に二重裏打ちを行います。
<焦げ穴 修理前>
焦げ穴についても新規補充せずに、裏打ちだけで対応します。
<印刷文字 修理前 その1>
繋ぎ合わせるにあたり、1つ問題が。。。
過去帳の上部に、日付が印刷されています。
印刷文字は、見開きで1日~31日まであります。
<印刷文字 修理前 その2>
上の写真は、繋ぎ合わせた想定として撮影しました。
ご覧のように、はっきりとした「七」という文字には戻りません。
これは、紙が欠損しているので仕方がありません。
<印刷文字 修理前 その3>
「廿八日」は、「八」の字の左側がありません
「廿」は「20」の意味で、「28日」のことです。
<印刷文字 修理前 その4>
「廿九日」の「九」は、残念ながら面影としか言えません
元の印刷文字のように復活することはできません。
繋ぎ直すことはできますが、元通りに戻せないこともございます。
この点は、お客様にもご理解いただいています。
<紙断裂 修理後 その1>
それでは、修理後の写真をご覧ください。
パックリ切れていましたが、裏打ちで繋がりましたね
<紙欠損 修理後 その1>
<紙欠損 修理後 その2>
裏打ちの紙が、欠損部を補っていますね。
<紙欠損 修理後 その3>
角度を変えてみた方が見やすいかもです。
「土台となる新しい和紙に既存の紙を貼り付けて繋げた」
と申せば「裏打ち」のイメージが湧きやすいかもしれません。
<焦げ穴 修理後>
焦げ穴も裏打ちで塞がりました!
<表表紙 修理前>
<裏表紙 修理前>
次に表表紙と裏表紙をご覧ください。
各表紙共に、縁の糸がほつれている箇所がありますね。
こちらは、糊を使い既存の表紙に留め直されます。
<表表紙 修理後>
<裏表紙 修理後>
糸のほつれが解消できましたね
糸が出ていますと乱雑な印象を受けますが、整えられてキリッとしました!
最後にページ追加についてです。
<表表紙側 ページ欠如 修理前>
お預かり時は表表紙と蛇腹の紙が断裂していたのですが、
職人さん曰く「1ページ抜けています」という診断結果でした。
今回は最初から現品をお預かりさせていただいたので良かったですが、
写真だけではおそらく見落としてそうな感じです。
<裏表紙側 ページ欠如 修理前>
裏表紙も同じく「1ページ欠如」しておりました。
表・裏表紙をよくよく見ていただきますと、既存のページがくっ付いていますよね
<表表紙側 ページ追加シュミレーション>
<裏表紙側 ページ追加シュミレーション>
この1枚を表・裏ともに追加しませんと、蛇腹が上手く折り畳みできません。
ここは何もしない訳にはいきませんので、無地の紙を追加させていただくこととなりました。
<剥離前>
「南無阿弥陀仏」は剥がして、再利用いたします。
また再利用する為でもありますが、各表紙の裏側をだすことで、新しい和紙を裏打ちし易くなる効果もあります。
表面が凸凹していますと糊づきも悪いですし、見た目も悪くなりますからね。
<湿しを与え剥離中>
湿しを与えて、既存の紙を剥がします。
<剥離後>
どちらも共に綺麗に剥がしていただきました。
<表表紙側 ページ追加 修理後 その1>
<裏表紙側 ページ追加 修理後>
綺麗に整えていただきました!
<表表紙側 ページ追加 修理後 その2>
「南無阿弥陀仏」を、うまく載せていただきました。
・紙断裂
・紙欠損
・焦げ穴
・糸のほつれ
・ページ追加
「裏打ち」「剥離」「糊付け」という作業を駆使していただき、綺麗に戻していただきました。
断裂箇所が多いと申しましたが、過去帳としての形とは言い難い状態でした
同じ角度で見ていただきますと、格好良く戻ったことが分かりますよね
「裏打ち」の作業模様をご覧ください。
裏打ち用和紙に、日付順に並べた写真です。
既存の本紙天地に合わせ罫線を引いていただいています。
上辺と下辺がズレないようにマーキングしてあるんですね♬
しかも、折り目となるであろう場所にもマーキングをされています。
すべて等間隔にしないといけませんので、大変な仕事ですよね
ブログの中ほどで、
「土台となる新しい和紙に既存の紙を貼り付けて繋げた」
と申せば「裏打ち」のイメージが湧きやすいかもしれません。
簡単な作業であるかのように私は書いておりますが、決してそんなことはありません。
肩が凝りそうな本当に細かな作業の連続です!!
折り目部分の裏打ちです。
「部分裏打ち」と表現していた箇所です。
以前のブログでも紹介しました折り目用の裏打ち和紙を準備します。
同じサイズで作るのですが、紙欠損部分は少し太めに作られています。
表表紙を例にして、細かく見てみましょう。
<表表紙側 ページ追加シュミレーション>
表表紙の隣に無地の和紙を新規補充しますとお話ししました。
<表表紙側 ページ追加 修理後 表側>
そして裏打ち後が上の写真です。
この部分の裏側をご覧ください。
<表表紙側 ページ追加 修理後 裏側>
<他の場所 修理後 裏側>
他の場所の裏打ちと比較しますと、太さの違いが分かると思います。
言わなければ見逃されてしまいますが、場所ごとに合わせた修理方法をとられています。
本当に脱帽です!!
太さの違いはございますが、どちらも息を殺して真っ直ぐになるように貼られます。
これぞ職人技と呼ぶべき手技ですね!!!
以上を持ちまして、修理完了となります!
約3ヶ月の修理期間をいただき、1月中旬にお渡し出来ました。
過去帳の寸法ですが、
丈(天地)11.2cm 巾5.2cmでした。
「第2次世界大戦の戦火を潜り抜けた過去帳なんです」
「雨の中、過去帳を持って非難したんです」
お預かり時に、お客様からこんなエピソードをお話しいただきました。
空襲警報が鳴る中、慌てて出られたんでしょうか?
戦争非経験者の私では、想像もできない壮絶なお話しです。
「先祖が持ちだしたこの過去帳を、どうしても使い続けたい。」
「大切に残していきたい。」
切実に仰られました。
お客様のご期待に応えられるよう修理していただきました。
戻ってきた過去帳を手に取って見ていただき、満面の笑顔でお喜びいただけました
「これを見たら母も喜んでくれる」
本当に本当に嬉しそうなお顔をされていました!
そのお姿を拝見し、私も嬉しかったです
嬉しいよりも、安堵した方が率直な気持ちかもしれません
大切に使い続けたい
とても素敵なことだと思います。
その期待に応えてくださった職人さんに大感謝です。
過去のブログで紹介した修理をしていただいた方と同じ方です。
工房が京都にありますので、私は直接お会いして打合せをさせていただいております。
弊社にとって心強い職人さんであることは間違いないのですが、
お客様にとっては「ヒーロー」かもしれませんね
新しく購入する方が手っ取り早く、安価に済みます。
しかしながら、今ある過去帳を、
どうしても使い続けたい
どうしても後世にまで残したい
そういうお気持ちのお客様もおられるかと思います。
そんなお客様のご期待に応えられるよう、職人さんとの懸け橋になろうと思います。
過去帳修理のことでご質問やご不明な点などございましたらば、
些細なことでもかまいませんので何なりとお問い合わせください。
しっかりとサポートさせていただきます!
【お問い合わせ先】
ホームページからのお問い合わせはこちらからお願いいたします。
直通メールアドレス 0883@d2.dion.ne.jp からもご利用いただけます。
※返信にお時間がかかる場合もございます。
<以下、関連ブログです>
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-1
在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-2
この度のご縁、誠にありがとうございました。
また、ブログを読まれて大切な過去帳を預けてくださいました。
何とお礼を申し上げればよいのか。。。感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、先週の21日(金)は5年ぶりの積雪10cm越え!
いや~~、よく降りましたよね
みなさんがお住まいの地域では、いかがでしたでしょうか?
天気予報を信じて、前日は実家に泊まりました♬
出勤できないと予測してましたので、その通りになりました
ワイパーの埋もり具合を見ていただければ、京都市内にしては物凄い積雪だったと思います。
雪道の運転に不慣れの為、思い切って泊まってよかったです
お店の周りは、もう完全に雪が溶けてなくなっていますが、
京都市内の北部を車で走っていますと、まだ残雪があります!
小学校のグラウンドには、顔のパーツがずれた雪だるまが、未だに残っていましたね(笑)
冷たくて触るのも嫌なので、雪は見るに限ります
平日ということもあり、通勤通学の時間帯は大変だったかと思います。
怪我無く、お過ごしされておられれば幸いです。
私はと言いますと、この日は来店ご予約がありました。
しかし、お客様判断で延期となり、時間がたっぷりできました。
この時間を活用し、ブログの下書きを書きました
昨年11月に2度起こりましたホームページ不具合から、
ブログが後手後手になってて困り果てていましたが。。。
お陰様で、少し余裕を持つことが出来そうです
時間を上手く活用でき、私的には良い日となりました!
でも、これだけ雪が降るのは、もう勘弁してほしいです
それでは、本日も、そして今週も元気よく過ごしていきましょう!
合掌
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