在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その4

みなさま、おはようございます。6代目です。

加茂定ブログにお越しいただきありがとうございます。

 

 

 

今年の7月に、過去帳修理のお問い合わせをいただきました。

在家様用過去帳修理のブログは、過去3回挙げております。

これまでの過去帳修理で共通していたことは、

表表紙・裏表紙ともに金襴製であったことでした。

修理前

修理後

上の写真は、2回目でご紹介しました過去帳です。

在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その2

修理前

修理後

こちらは3回目でご紹介しました過去帳です。

在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その3

4回目の今回は、表表紙・裏表紙が塗り板となります。

当社では「塗板過去帳」と呼んでいます。

塗り板だからと言いましても、特別に変わる訳でもございません。

表紙が黒く塗られているだけで、構造自体は同じです。

 

 

 

余談ですが、黒以外の色で塗られている表紙の過去帳もございます。

また、塗り板に蒔絵が加飾されたデラックスな過去帳等々もございます。

新規での購入や修理のお問い合わせ、お待ち申し上げております!

 

 

 

この度の過去帳も過去3回と同じく、経年劣化で紙が破れております。

全断裂

部分断裂

天地を縦断して完全に破れている箇所や、部分的に破れている箇所もあります。

写真をよくご覧いただくと分かりますが、紙が破れている箇所は谷側になります。

 

 

過去帳は、蛇腹式になっています。

蛇腹なので折り目に山側と谷側があり、鉛筆で指している折り目は谷側というわけです。

過去帳は開けたり閉めたり致しますので、山側に比べ谷側の方に負荷がかかりやすいです。

そのため、破れているのは決まって谷側となります。

 

 

 

これらを繋ぐ方法は、「裏打ち」という手法で行います。

「裏打ち」とは、既存の紙の裏側に新しい紙を貼ることです。

裏打ち用の紙は、和紙を使用しております。

 

 

 

裏打ちをすることで断裂箇所を繋げていくのですが、紙を1枚貼るだけではありません。

上でも述べましたが、過去帳は使う度に開いたり閉めたりします。

修理後も、これまでと同じように開け閉めして使われます。

開閉の繰り返しで「紙の耐性が落ち、破れる」という症状を少しでも抑えるために、弊社の修理では補強を兼ねて裏打ちを2回行います。

部分裏打ち(1回目)

全体裏打ち(2回目)

まずは、折り目に沿って「部分裏打ち」をいたします。

谷側だけでなく、山側にもすべて行います。

部分裏打ち用の和紙

部分裏打ち作業

「部分裏打ち」の例として掲載している写真の紙は短いですが、

実際は折り目の天地をすべて覆うように紙を用意し、折り目に裏打ちしていきます。

上の写真が、折り目にあてがう裏打ち用の和紙と作業風景です。

そして、折り目のすべてに「部分裏打ち」を行った後、全ての紙を覆うように全体を裏打ちします。

「2重裏打ち」と呼んでいますが、折り目の負担を考慮した修理法となっています。

断裂箇所を繋ぎ直すとともに、将来を見据えた折り目の補強を含ませております。

過去帳は、最初から最後まで1枚の長い紙では出来ていません。

途中に繋ぎ目を作り、1冊の過去帳となります。

ですので、ある程度のグループごとに二重裏打ちを行い、最終的にドッキングさせるわけです!

 

 

 

以上の工程を踏まえて、

全断裂修理前

全断裂修理後

全断裂箇所が繋がりました。

部分断裂(下側)修理前

部分断裂(下側)修理後

部分断裂箇所も繋がっています!

部分断裂(上側)修理前

部分断裂(上側)修理後

見開き14日のページは上下共に部分断裂していましたが、しっかり繋げていただきました!

しかしながら、「四」の字を見ていただくと分かりますが、修理前のような一筆書きの文字にはなりません。

 

 

こちら21日も上部が部分断裂していたのですが、

折り目に当たる「一」の途中部分に裏打ちの和紙が見えています。

折り目を跨ぐように書かれている文字は、裏打ち後に一筆書きで書かれた文字には戻りません。

シミ修理前

シミ修理後

次に、シミについてです。

上の写真のように、薄いシミは綺麗に落ちることもありますが、

 

 

濃いシミは完全には無くなりません。

「修理=綺麗になる」というイメージを持たれると思うのですが、

必ず綺麗になるというわけではありません。

その点だけは、お伝えしておきます。

裏側修理前

裏側修理後

裏打ち前と後との裏側の比較写真もご覧ください。

同じコマ割りで撮影出来ていなく、すみません。

赤矢印のシミ場所が、同じ位置になります。

 

 

 

部分裏打ち用の紙(青矢印)が、山側と谷側それぞれに貼られています。

薄いシミは全体裏打ちでほぼ隠れてしまいましたが、濃いシミは透過して写っていますね。

 

 

二重裏打ちをすることで、過去帳は膨らんでしまいます。

片方だけが膨らみ、傾斜がついてしまいます。

紙の断裂を抑えることに主眼を置いていますので、致し方ありません。

 

 

 

過去帳の修理を行う際に、断裂を繋ぐことは毎回行っております。

ただし、繋ぐ際に折り目に跨り書かれた文字は、一筆書きの書体には戻りません。

さらに、シミは必ず消えることもなく、厚みは膨らんでしまいます。

これらのことは、過去帳修理において毎回起こる事象です。

 

 

 

次に、この度の修理のみで目を引いた修理箇所のご紹介です。

23日と24日の繋ぎ目は、紙が欠損していました。

紙の欠損修理前

紙の欠損修理後

欠損部の形状に合わせた紙を新たに作り表側から補充するのではなく、

紙の欠損修理前

紙の欠損修理後

部分裏打ちの紙で穴を塞いでいます。

修復前は撮影用の下敷きとして使っている黒のフェルトが欠損部から見えますが、

修理後は裏打ちの白い和紙が見えていますよね。

 

 

最後に、表紙についてです。

修理の際に、蛇腹部分の紙と表紙は分離させます。

各表紙の裏側は塗られずに、木地の状態でした。

 

 

漆で、綺麗に塗っていただきました。

裏側も塗っていただきましたが、

片面だけ塗る場合は、板が反ってしまう可能性があるためです。

反らないように、両面塗っております。

 

 

 

また、中心だけが塗られておりません。

両面くるりと塗る際に持つ所が無いため、板を取り付けて持ち手部分を作ったためです。

塗り終わった後に持ち手を剥がしますので、その部分だけが木地のままという訳です。

故意に塗っていないという訳ではありません。

表と裏を特定させていますが、

既存の板に鉛筆で印が付けられていました!

表裏が逆にならないよう、間違えることがないように先人の配慮が見られますね。

 

 

既存の板は当て傷が散見され、痛々しい状態でした。

しかし、塗り直したことでスカッとツヤツヤに戻りましたね。

鏡のように写り込みしますので、撮影する角度が難しかったです(笑)

表表紙修理前

表表紙修理後

裏表紙修理前

裏表紙修理後

各表紙が取り付けられた状態の修理前後です。

 

 

煌くツヤツヤ感のある表紙に戻りました!

グッジョブです✨😁✨

 

 

 

7月にお問い合わせをいただき、8月のお盆を終えてから修理を始めました。

例年以上に気温が暑く乾きが早まったため、予定より1ヶ月短縮してお渡し出来ました。

従来通りであれば3ヶ月かかるんですけどね😓

 

 

 

江戸時代初期から平成までの期間で亡くなられた方が、過去帳に記載されていました。

特に徳川幕府は約260年間続きましたので、大多数の方が江戸時代の方でした。

 

 

 

「どうしても残したい!」

 

 

 

破れたり傷ついたりしている過去帳を、悲痛な思いで持込されました。

しかしながら、見違える姿になって戻ってきました過去帳を見て、とても嬉しそうな表情をされていました。

直接お会い出来たからこそ、私も一緒になって体感することができました。

 

 

 

奇しくも修理しました過去帳は、昭和12年10月に開眼されていました。

しっかりと日時が記載されていました。

そして、修理を終えてお渡ししましたのが、令和5年10月でした。

同じ10月ってところに、縁を感じてしまいますよね。

まるまる86年間の月日が経過していることにも、ロマンを感じざるを得ません✨

 

 

 

いつものように修理をしてくださった職人さんに大感謝です。

過去ブログで紹介した修理をしていただいた方と同じ方です。

 

 

 

工房が京都にありますので、私は直接お会いして打合せをさせていただいております。

弊社にとって心強い職人さんであることは間違いないのですが、

お客様にとっては「ヒーロー」かもしれませんね。

 

 

 

ちなみに、修理金額は新しい過去帳を数十冊は買えます。

お客様の手前、金額を明記することはできません。

 

 

 

新しく購入する方が手っ取り早く、安価に済みます。

そのため、ほとんどの方が新品購入を選ばれています。

 

 

 

しかしながら、今ある過去帳を、

どうしても使い続けたい

どうしても後世にまで残したい

そういうお気持ちのお客様もおられるかと思います。

 

 

 

そんなお客様のご期待に応えられるよう、職人さんとの懸け橋になろうと思います。

 

 

 

過去帳修理のことでご質問やご不明な点などございましたらば、

些細なことでもかまいませんので何なりとお問い合わせください。

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<以下、関連ブログです>

お寺様用「過去帳」の修理をご下命いただきました!

在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-1

在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その1-2

在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その2

在家様用「過去帳」の修理をご下命いただきました! その3

 

 

 

この度のご縁、誠にありがとうございました。

 

 

 

さて、12月に入りました。

朝晩、冷えてきましたよねぇ~~~❄

車の外気温計は、ここのところ4度とか5度とかで寒い寒いです😰

今朝は、なんと!3度でしたぁぁぁ!

寒い寒い😓

 

 

 

布団に入る時は幸せを感じるのですが、出る時は勇気がいるようになってきました。

前に話したかもしれないですが、

ニトリの「Nウォーム寝具」はメチャクチャ暖かいですよ!

自分の体温で熱が籠るので、極楽の暖かさなんです😁

 

 

 

風邪だけ引かないように過ごしたいですね。

みなさんも、防寒をしっかりされてお過ごしくださいませ。

寒さに負けず、気張っていきましょう!!!

合掌

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